社会
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鳩山政権が9月16日に誕生してから3ヵ月近くになる。「友愛」を標榜するが、これまでの政治を検証すると、社会主義路線に近いところが多く、新自由主義路線を歩んだ小泉政権と正反対の新社会主義路線を歩んでいるかに見える。
「経営者より労働組合」が第1のキーワードである。
11月4日夜、日本記者クラブ創立40周年の記念パーティが開かれた。天皇皇后両陛下が帰られたあと、鳩山首相が国会審議の関係からパーティ終了直前にあらわれたが、首相をじっと待つ大物財界人の姿があった。首相が現れるや名刺を出してあいさつをした。日本商工会議所の岡村会頭だった。名刺を出したところを見ると、政権発足後50日も経って、日本商工会議所の会頭が総理に初めて対面したのである。一方、連合とは、内閣成立直後に高木剛会長と会談、高木氏にかわった古賀伸明会長とも定期的に「政労会見」を開いている。閣内にも官房長官始め労組出身の閣僚を任命するなど、財界より労働組合重視の布陣。経営者を軽視し労働組合を重視するのは、朝鮮労働党やソ連共産党、中国共産党、ベトナム共産党の考え方なのだ。
「成長より分配」が第2のキーワード。
藤井裕久財政相はテレビに出演し「民主党の辞書には経済成長という文字はない」と二つの番組でしゃべっている。成長より分配が鳩山政権の方針なのである。分配とは、すなわちバラまき。農家に対する戸別所得保障、高速道路無料化、子ども手当て、などが分配である。「集めた税金を国家が国民に均等に分配する」のが社会主義。「経済を成長させてパイを多くし、そこから税金をとって国家の税収を多くする」のが資本主義国の考え方だが、「バラまきで足りない金は増税や赤字国債を発行すればよい」という鳩山政権の考え方とは違う。鳩山首相は就任早々、国連で温室効果ガス25%削減をぶち上げた。日本経済の成長との関連は、まったく考えていない、と見える。
「アメリカよさようなら。中国よこんにちは」が第3のキーワード。
普天間基地問題の行方と東アジア共同体構想を見ると、このキーワードが浮か上がる。普天間基地移設問題は、名護市辺野古のキャンプ・シュワブ地域に移転することが日米で外交的な約束をしているにもかかわらず、鳩山首相は「県外やグアムに移転したい」と発言している。鳩山首相の考え方は「アメリカが日本を共同防衛する見返りに、日本国内に米軍基地を提供する」日米安全保障条約を軽視する発言を続けているわけで、米国政府は最近では匙を投げたかたち。「韓国の盧武鉉前政権と変わりがない」と日本との同盟関係を一歩退く意見も、米国内に出て来た。そんなことはおかまいなしに、鳩山首相は、中国やベトナムを含めた東アジア共同体構想をぶち上げている。ヨーロッパ共同体を真似する考え方だが、問題は社会主義国の中国が中心になること。中国はごく近いうちに日本とGDPが肩を並べる、そして追い抜く。つまり、東アジア随一の経済大国になる。欧州共同体はキリスト教と自由経済を軸に結ばれているが、鳩山構想は社会主義路線が共同体の軸になりかねない。一方、小沢幹事長が多数の民主党国会議員を連れて、中国共産党の胡錦涛主席に会いに行く。鳩山首相も小沢幹事長も「アメリカより中国」だ。アメリカとの関係を疎遠にして中国と切っても切れない関係になるというのは、日本も社会主義路線を歩むのか、いいたくなる。
「子どもは国家が育てる」が第4のキーワード。
人類の歴史において、子どもは家族が育ててきた。子どもを家族でなく国家が育てるのは、ギリシア時代のスパルタやナチス時代のドイツ、それにマルクス・レーニン主義の共産国や社会主義国の考え方である。子ども手当ては、「所得の低い家庭にだけ配れ」という野党や国民新党の意見に対し、鳩山首相は「すべての家庭に配布する。なぜなら、子どもはみんなで育てようという考え方だから」と、説明している。その見返りに、扶養控除と配偶者控除を廃止する。税法上で家族を認めず、子どもは国家が育てるという、考え方ではないか。
「友愛」とは、「新社会主義」なのか、と思わざるをえない最近の鳩山政権である。
(志村嘉一郎=ジャーナリスト・帝京大学教授)
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