トップページ ≫ 社会 ≫ 若者と老人の根性を正したい(第二回)
社会
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外交評論家 加瀬 英明
振り込め詐欺によって騙された老人たちも、金(かね)が万能という世相によって毒されている。弁護士とか、警察官だと名乗って、「あなたの息子が電車内で痴漢を働いて逮捕されたが、今すぐ二百万あれば示談が成り立って、釈放される」といった手口で、振り込ませるというものである。
ひと昔前の母親だったら、凛として「そのような息子は、ひとつ存分に懲らしめて下さいまし」とか、「どうぞ、お灸をすえてやって下さい」といったことだったろう。老いも若きも、何でも金次第で買うことができると思うから、恥知らずだ。
老人は本来であれば、社会の鑑(かがみ)である。若者に手本を示さなければならないのに、詐欺師の電話を受けてATMに慌てて走るのは、浅ましい。
それにしても、息子だと名乗る者の口車に乗ってしまうのは、日本で家族が崩壊したことを意味していて、おぞましい。家族がばらばらになって日常の接触がないのだ。
留学詐欺の罠に落ちる若者も、子や孫が不祥事を起こしたと詐欺師にいわれて、ATMを操る老人も、金々々ということでは、詐欺師と同じ世界に住んでいよう。
福沢諭吉といえば、一万円札を飾っている。明治の日本をつくった、偉人の一人である。金といえば、福沢を思ってほしい。
福沢の箴言の一つとして、「独立自尊」という言葉がある。
しばらく前のことになるが、私は銀座の交詢社から、講演を依頼された。
交詢社は福沢が明治十三年に欧米諸国に倣って、紳士が集まって親睦をはかるクラブとして創立した。私は演題は何にしましょうかと問われて、とっさに条件反射のように、「福沢精神と今日の日本」と答えてしまった。
その日が来た。私は福沢諭吉の研究家でなかったので、ひどく悔いた。
そして、銀座まで行く車中で、福沢に「独立自尊」という有名な言葉があって、二つの言葉から成り立っているが、いったい独立と自尊のどちらのほうが大切なのだろうかと、思案した。
たまに役に立つ閃(ひらめ)きを得ることがある。着く前に自らを尊べば、人も国家もおのずから独立するのだと思って、そう前置きして話した。何ごとも、出発点がよいことが大切なのだろう。講和は案外に好評だった。
福沢は武士の子として、幼少から旺盛な自立心を持って育った。生涯を通じて、強烈な個人意識を培った。
自らを尊ぶためには、自らの手で尊ぶに価する自分を創らなければならない。そのような努力をすることによって、はじめて自立することができる。
今日の日本は、近隣諸国の軽蔑をかっている。そのために、国民がすっかり畏縮している。まず、自らの伝統文化と歴史を尊ばねばなるまい。
戦後の日本は、アメリカに国防を代行させて、国の大事である国家の独立を依存してきた。情けない。日本が自立するためには、自らを尊ばねばならない。
(おわり)
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