社会
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消費税増税論に合せて国会議員定数削減論がまたぞろ蒸し返されている。本当に日本の議員定数は多すぎるだろうか?主要国と比較してみよう。
日本は人口1億3千万で議員定数は722(衆議院480、参議院242)。アメリカは人口3億で定数535(上院各州2名計100、下院435)。確かにアメリカと比べれば多い。人口を勘案すれば尚更そうである。だが人口がほぼ6千万と日本の半分以下のイギリスとフランスはどうか。イギリスは公選制の下院だけで646(貴族院は貴族に限り公選制なし、無報酬、定数なし)。フランスは919(国民議会576、元老院343)。いずれも人口当り議員数は日本よりはるかに多い(尚中国の全国人民代表大会は単に共産党の決定を追認する機関であって民主主義国の議会とは全く違い、しかも議員は事実上共産党が指名しているので比較の対象にはならない)。
定数削減を言う人は本当に定数が多すぎると思っているのか、それとも議員に払う報酬等を節減したいと思っているのか整理してから発言してほしい。尚後者であれば議員一人にかかる経費は給料、秘書手当その他及び政党助成金を加えると年間1億円余。その中純然たる給料は2千万円余であって総役得の20%を占めるだけからこれだけ引き下げてもあまり意味はない。
議員定数は変えずその代わり一人当り年間4千5百万円もの政党助成金をなくすのがいいと私は思っている(共産党だけは政党助成金の受取を辞退している)。その目的は国費節約もさることながら党執行部の力を殺ぐことにある。政党助成金は党執行部つまり幹事長を通じて配分される。これが幹事長ポストの権力の源泉である。
6月8日付け産経新聞「正論」で屋山太郎氏は小沢幹事長が民主党静岡支部へ政党助成金を配分しなかったことに関し次のように書いている。
前略。政党助成金というのは全議員に公平に配分されるべきもので、党規や倫理に反しない以上、止められるいわれはない。小沢氏特有の無理筋の恫喝(どうかつ)だ。
以上引用
山屋氏は法の趣旨を誤解している。私も今の制度がいいとは思わないが少なくとも法は党執行部が裁量的に配分することを想定或いは容認している。「全議員に公平に分配されるべきもの」であれば給料と合せて支払えばよいが現行法では党執行部を通じて支払われる。
法の趣旨は執行部の権限を強化し政党らしい政党を作ろうとするものだ。政党らしい政党を作ろうとした、政治改革の美名による小選挙区制と政党助成金は時代錯誤の大悪法だと私は考える。政党(もどき)ではなく議員個人本位の政治が今後めざすべき政治であると考える。
政党助成金をなくせば、また無理な金集めをするものが出てくるだろう。そうさせないためには金のかからないネット選挙を全面的に解禁することだ。それではパソコンが使えない老人が困る?今でも老人の投票率は十分過ぎるほど高い。そのことが世代間の年金を含む生涯所得格差に拍車をかけている。若年層の投票率を高めることが重要だ。
選挙カーで名前を連呼するだけの半世紀以上前の選挙方法はいい加減やめてほしい。
資金集めは個人の小口献金を中心にすることだ。有権者も政治家の悪口を言う前に、自らが支持する政治家にたとえ僅かでも献金することだ。
戸別訪問は解禁すべきだ。戸別訪問禁止は立法理由として買収の温床になるからということになっているが実は共産党の組織力を恐れた自民党の共産党封じだ。
国会は何のためにある?
菅首相が先日消費税に関する与野党協議の場を設けたいと言ったのには奇異の念を覚えた。税の徴収の仕方とその使い道を議論するのが国会の最も重要な使命だ。それなのにわざわざ国会の外に「消費税に関する協議の場を設けたい」とは何のことか?
もっとも各野党とも上記の国会の使命を忘れ、いわゆる政治資金疑惑の追及に血道を上げている現状では菅首相の発言も理解できる。
仮に国会が延長されたとしても恐らく論議の中心は鳩山前首相、小沢一郎前幹事長、荒井新大臣等のいわゆる金にまつわる疑惑が中心になったことであろう。特に予算委員会では、そうしたバカバカしい話が中心となりしかも全閣僚が出席を義務付けられるので返って国政は停滞する。その意味で民主党が新首相を選出したにも関わらず国会を延長しなかったのはよかったと思っている。
つまり問題は議員定数などではなく国会審議のあり方だ。戦後憲法は変わったが基本的な議事慣行は帝国議会時代と変わらない。国会の議事慣行を全面的に見直すことだ。
本題から離れるが今日の朝日新聞「記者有論」で編集委員の安井孝之氏が法人税減税論に関し次のように述べている。長くなるので結論部分だけ引用する。
(日本企業の利益率が低いので実際に支払っている法人税はさほど多くないというのが前段の趣旨)税率が高いから日本勢からiPadが生まれなかったわけでない。税率を下げればiPadが生まれる保証もない。5%の法人税率下げで1兆円の財源がいる。減税の費用対効果を見極める仕分け作業が必要だ。 以上引用
安井さんは肝心なことを見落としている。朝日新聞は日本の法人税率が高いからといって外国に引越しできないが、一般企業は本社を外国に移すのは容易だ。法人税減税の目的は日本企業の海外移転を阻止すること及び外国から企業を呼びこむことだ。その結果国の法人税収入は返って増えるかもしれない。
(ジャーナリスト 青木 亮)
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