社会
特に埼玉県、さいたま市の政治、経済などはじめ社会全般の出来事を迅速かつ分かりやすく提供。
参議院選挙での躍進で「みんなの党」の政策に関心が集まっている。私もあらためてアジェンダを読んだ(手垢に汚れた「マニフェスト」に代えて最近同党は「アジェンダ」を使っている)。
みんなの党の一枚看板である公務員制度改革には見るべきものがある。特に自治労を支援組織とする民主党が及び腰の地方公務員数の削減に踏み込んでいるのは評価できる。こうしたテーマは党首である渡辺さんの直轄事項だ。だが「経済学の教科書を一度も読んだことがない」と自称している渡辺さんが高橋洋一教授に丸投げしている経済政策はいただけない。
最も問題であるのは財政再建に触れることがない点だ。強いて挙げれば「増税の前にやることがあるだろう」くらい(そのやることの一つに先程の公務員制度改革が含まれる。「消費税は地方の財源に」と書いてある。だとすれば仮に消費税率を上げても財政再建にはあまり使えない)。
世界標準の経済政策を遂行し、生活を豊かにする。名目4%以上の成長で10年間で所得を5割アップ
世界標準の経済政策とはなにか何の説明もない。この20年間一度もできなかった4%以上の経済成長がどうやってできる?しかも人口減少等事態は悪化の一途だ。
財源はしっかり手当てする! ―埋蔵金は3年間で少なくとも30兆円―
今後3年間で30兆円+アルファの財源が捻出できると書いてある(詳細はアジェンダ参照。ネットからダウンロードできる)。
以下の内容は十分実現できる。
外為等の特別会計から 18兆円+アルファ
政府株の売却 2.5兆円+アルファ(JT2兆円、郵政5兆円等)、
道路特定財源の一般財源化 3.3兆円
合計 23.8兆円+アルファ
というわけで30兆円+アルファは荒唐無稽な数字ではない。
実は政府が為替介入に使う外為特別会計(財務省所管)には110兆円ある。18兆円+アルファは控え目過ぎるくらいだ。こうした特別会計にメスを入れないで些々たる事業仕分けを行うのは間尺に合わない。「事業仕分け」は財務省の目くらましという陰口の所以である。
それにしてもこうしたいわゆる埋蔵金は一回ぽっきりのもので二度は使えないので財政再建の道筋は見えない。
成長戦略の項でデフレ脱却、40兆円のデフレギャップ解消、東京を世界の金融センターとして再生、アジア等の文字が並んでいる。だがバラマキ以外にデフレギャップ解消策があるのなら教えてほしい。法人税減税さえ中々実現できない国にどこの国の金融機関がくるだろうか。アジアと言えば政府に言われるまでもなく民間はとっくに動いている。
アメリカのFRBやECBを引き合いに出して日銀のマネーサプライが不十分だと非難しているが、アメリカや欧州はリーマンショックで傷んだ金融機関に資本増強するためにマネーサプライを増やしたのであって日本とはまったく事情が違う。
今以て日銀によるインフレターゲット論を信奉しているのは嘆かわしい。
日銀法改正を標榜している。これは日銀が大蔵省日本橋出張所と揶揄された昔に戻すもので日銀の独立性を損なうものだ。
もっともこうした永田町世論を気にして成長分野への低利融資制度を設けた日銀も情けない。
みんなの党のアジェンダが財政再建にほとんど触れることがないのは、日本国には資産もあるので財政危機ではないという基本的な認識があるからだ。
だが道路、橋等の固定資産を除き借金に充当できそうな金融資産は外為特別会の110兆円くらいしかない。社会保障基金200兆円は将来にわたる給付の引当であって借金に充当できる性格のものではない。高齢化が進行し毎年社会保障費が増大するのでこれでも足りないくらいだ。100兆円近い出資、貸付金も相手は採算の悪い特殊法人等であり、その多くは不良債権化している。
余談―森永卓郎先生の暴論
今月8日の朝日新聞「争論」欄で森永先生は以下のご高説を述べておられた。
社会保障費の増加分は相続税を上げてまかなうべし。毎年平均90兆円の相続財産(金融資産+不動産等の実物資産)があるので税率50%とすれば45兆円の税収がある(青木注:これだけで今年の全税収を上回る)。森永先生が挙げる90兆円の根拠:日本国全体の個人資産は金融、実物合せて2700兆円、30年で世代が入れ替わるとして2700兆円÷30=90兆円
以前テレビで彼が同じことを言っているのを聞いた時、相続財産が毎年90兆円とはあまりにも過大で1桁間違えていると思ったが、やはりその計算根拠はムチャクチャだ。30年で世代が代るのであれば毎年1億3千万人÷30=430万人が死亡する計算になるが実際の死者数はここ数年百十数万人で推移している。それにこんな高率の相続税を課せば資産逃避を促すだけだ。おまけに手持ちのキャッシュで相続税を払える人は少ないだろうから住宅を売るか現物納付することになり住宅難民が続出する。尚森永先生は個人金融資産1500兆円として計算しておられるが、実際には住宅ローン等の負債を相殺すれば1100兆円弱しかない。
森永先生はちょっと前まで経済が成長すれば税収が増えるので増税の必要はないと言っていた。なるほど「経済が成長する」という可能性の乏しい前提付きではあるが筋は通っている。
ところが最近突如として相続税重課論を言い出した。これは実現可能性がまったくないし仮に実行するとすれば国民生活を破壊する暴論だ。来年にはまた別の理屈をひねくりだすかもしれない。
まさか彼の言うことを本気で聞く人はいないと思うが、そんな粗忽者がいないとも限らないので今後は「経済漫談師」を名乗るようお勧めする。
グーグルには便利な機能があってよく使われるキーワードを表示してくれる。森永卓郎と入力するとまっさきに「馬鹿」が出てくる。因みに「日本国」と入力すると「借金」が最初に出てくる。お試しあれ。
(ジャーナリスト 青木 亮)
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