社会
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柳田法務大臣の失言に自民党が怒っていると聞いて私はてっきり自民党が発明した紋切り型答弁を無断借用したことに対して怒っているのかと思った。よく調べたら柳田発言は国会軽視だそうだ。国会軽視と言えば、そもそもど素人を大臣にすること自体国会いや国政軽視であるし、ど素人を大臣にするのは吉田茂以来ずっとそうだった。今の学のない新聞記者は知らないだろうが「伴食大臣」という言葉もある(自民党時代だって看護婦さん(南野知恵子)を法務大臣にしたことがあってあの人の答弁もひどいものだった。「私は素人だからわかりません」というのもあった。正直なだけましか)。
紋切り型答弁は他にも「何々に万全を期すように関係者に指示した」というのがある。これを聞く度に私はいつも「ど素人が玄人に何を指示するのかな」と思ってしまう。これも無策ぶりをごまかすには便利な答弁だ。
外務大臣の紋切り型答弁。何か国際的事件があるたびに「全力で情報収集に努める」、「関係各国と緊密に協議し適切に対処する(要はアメリカさんの指示に従うということ)」等。
ところで審議に応じないことを野党の有効な議事妨害としたのは旧社会党の発明だが今度は野党に転じた自民党が審議拒否をちらつかせている。議事妨害としての牛歩戦術を発明したのも旧社会党だった。昨年9月与野党逆転したがこうした不毛の国会は一向に代わり映えしない。こうして見ると自民党と旧社会党がわが国議会政治にもたらしたものは何だろう?
野党はひたすら大臣の失言を狙い、大臣はそうはさせまいとして紋切り型答弁に頼る。こうした国会質疑のあり方こそ問題だ。当電子新聞に書いた拙文「国会審議はなぜ面白くない」を参照。検索欄に上記テーマを入力すれば見られる。
柳田発言は正鵠を射ているが、永田町とは本当のことを言うと失言とされる特殊部落だ。
そもそも国会の質疑は、大臣は所管事項をすべて知っているという大嘘の前提に基づいていることが問題だ。
昔「なんちゃってオジサン」なる人物が話題になった頃ラジオの投書で「国会の質問者と答弁者はかならず最後に『なんちゃって』と付け加えるのを義務付けるべきだ」というのがあっていたく共感したことを思い出した。
例えば「個別の事案にはお答えできません」、「法と証拠に基づいて適切に処理します」の後に「なんちゃって」を付け加えるのである。
野党は指を咥えて民主党の事業仕分けを眺めているがなぜあれを国会でやろうと提案しない。税の徴収の仕方とその使い方を決めるのが国会の最も重要な権能であり両院の国政調査権はそのためにあることを知るべきだ。小沢や鳩山の金の問題のためにあるのではない。
参考:大臣問責決議案のこと
柳田法務大臣は問責決議案の可決を待たずに辞任したが大臣問責決議、内閣問責決議、内閣不信任決議の三つの区別を説明できる人がどれだけいるだろうか。
この中法的意味をもつのは内閣不信任決議だけで衆議院にだけある権能である。これが議決されれば内閣は総辞職するか衆議院を解散しなければならない。
個々の大臣の問責決議案は政治的な意味はあるが法的効力はない。衆参両院で議決可能。内閣問責決議案は不信任決議ができない参議院が議決する。内閣不信任決議と違って法的効力はない。仮に可決されても内閣は総辞職する必要はない。
仙谷官房長官の言語感覚
前回仙谷官房長官の柳腰発言を取り上げたが、また言ってくれました。「自衛隊は暴力装置」と。軍隊が暴力装置であることは政治学の常識だが閣僚が国会でそれを言っちゃお終いでしょう。
それと尖閣事件は領海侵犯だけでなく公務執行妨害罪と器物損壊罪を構成するのだから国法上一般の犯罪者扱いで一向に構わない。なぜ犯人に対し敬語を使うのか。
仙谷官房長官は「菅があれほど使えないとは思わなかった」と陰口をたたいているらしいが他人のことを言えた義理か。
菅首相と言えば奇兵隊内閣を自称したけれどむしろ霞が関幕府を守る新撰組といった役どころだ(菅さんが政治オンチの近藤勇で仙谷さんが土方歳三だ)。菅さんは子息に源太郎と名付けている。児玉源太郎に因んだものだ。彼は多分「坂の上の雲」でしか児玉を知らないのだろう。司馬は好き嫌いが強いので彼の人物評価だけに依存すると間違う。
尖閣事件で不法に船長と乗組員を釈放した行為は、偽造パスポートで不法入国した北朝鮮の金正男を田中真紀子外相がさっさと釈放して厄介払いしたのと好一対をなす。
尖閣ビデオを漏洩した海上保安官を逮捕しなかった件
この件は興味ある論点をはらんでいる。
1つ
動機が善(私益ではなく国益をはかる目的)であればあれば違法でも許されるのか。もしそうなら政治的暗殺も許されることになる。例えば戦前なら血盟団事件、515事件、226事件等枚挙にいとまがない。国益に適うかどうかを個々人の判断に委ねたのでは法治国家とは言えず中国の愛国無罪と同じレベルに堕してしまう。
1つ
逮捕の意味。逮捕の目的は本来裁判のために被疑者の身柄を確保することにあるのだが実際には自白強要と社会的制裁を科すために乱用されている。そして法律にうとく検察と癒着しているメディアはそのことを問題にしない。
(ジャーナリスト 青木 亮)
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