文芸広場
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そう思った瞬間だった。
そうここは、富士山八合目。午前5時。
御来光の神秘的で、思わず息をのむほどの壮麗さ、この感動はこの上ないものである。
これを拝めただけでも、ここにきた意味があったのだ。
この夏、日本一の山富士山に登った
バスツアーの仲間と共に山頂をめざした。
ツアーの良い点は、ガイドさんつきで多くの知識を得られる。
しかし、マイペースでは登れないのが難点だ。
団体行動なのでそれはいたしかたない。
相棒の高山病発症で山頂までを泣く泣く諦め、八合目で仲間を見送った。
その後、御来光を拝み下山する。
雲上の爽快気分を味わうことなく、相棒の体調を気づかいながら3時間。
あいにく達成感もなく、いざ帰路につく。
達成感がないということは、リベンジしかない!
リベンジをしたいこと添乗員に告げたが、富士山は8月末でツアーも終了、山小屋も閉鎖だと聞かされた。
「ああ私のリベンジは来年まで持ち越しか・・・」
それならば、来年リベンジするぞと皆に誓った。
それから何日かたった9月初旬。
パソコンを開いていると「9月初旬まで富士山ツアー」の文字だ。
「ツアーがあるということは、まだ登れる!」わたしのアンテナが全開した。
しかしネット情報では、9月は山小屋も終わり、天気も心配な様子。
初心者にはあまりおすすめできないとマイナスなことばかり。
おまけに雷雨ばかりの毎日で天気予報も曇りのち雨。
自然は侮れないので諦めようと心に決める。
しかし、この夏の富士山登頂が私の果たすべき目標だったはず。
心が揺れ動く。
では、天気が思わしくなかったら引き返そう、そう決めて、リベンジの富士山へ深夜ハイウェイを走らせる。
談合坂で1時間ほどの仮眠をとり、いざスバルラインへ。
富士山五合目を午前7時ちょっと前に出発する。
心配をよそに天気も良好。山は私を受け入れてくれている!
前回の8月の大混雑と一変、余裕のある登山道に感激の笑みをもらす。
これぞ登山だ!そうつぶやきながらの登頂は八合目を過ぎたくらいから、長く、苦しく、頭の痛いものになった。
頭が痛い、これは軽い高山病である。ひどくなると吐き気があり、吐くという結末だ。
そんな人を前回の登山時に何人かみてきた。
酸素缶、酸素の入ったミネラルウォーターを取り続ける。
なんとか動けるが、睡眠不足で疲れがピーク。
山頂についたころは3時をまわっていた。
8時間かけての登頂は、長い長い道のりだった。
疲れもピークだが歓喜もピークだ!
一望千里とはいかないが、ふわふわ綿菓子のような雲海に感動を覚えた。
しかし、感動にひたっている暇などとうていない。
なぜなら、これがゴールではないからだ。
下山だ、早く下山をしなければ日がおちて真っ暗闇だ。
ライトは持っているが、下りの道は危険だとテレビでもやっていた。
急げ、急がないと。
急斜面での砂利の多い下山道は、危険がともなう。
何回か走ってすってんころりん。
こんなところで怪我をしては、どうにもならぬ。
気をつけて、気をつけて下りなければ。時間もない。トイレもいきたい。
しかし、トイレは八月末で閉鎖。
早く下りるしかない。
そんなこんなで4時間かかった下山は何事もなく、12時間の富士山の旅が
無事終了。
遠方で稲光が光るが、私の頭上には、美しき数多の星たちが「がんばったね!」と拍手をおくってくれていた。
そして、「疲れた、終わった」と達成感にひたりながら、最後に見上げた星空に、流れ星をみつけた。
きっと富士山からのご褒美だろう。
こうしてわたしの夏が終わった・・・。
『がむしゃらに走った夏に別れを告げた 後悔はないと 今はっきり言える
・・・そしてまた何かに向かい 奮い立たせよう それがわたしの生きる証だから』 (詩・ひとときの休息より抜粋)
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