トップページ ≫ 教育クリエイター 秋田洋和論集 ≫ 品格ある子どもの育て方第三章 「中学受験」で品格をどう身につけさせるか(34)
教育クリエイター 秋田洋和論集
自分の経験をすべて正しいと思うな
「時代が違う」を受け入れる勇気を持とう
みなさんにも経験がありませんか。「昔は○○だった」というノリで、自分の経験を美化したり子どもや後輩にも勧めたり。その経験がすべて正しいとは限らないのにです。
私が高校生の当時、自分の父親や教師に言われて非常にイヤだったことがあります。
「暑いなんて言ってるうちはダメ。昔はバケツに水を入れ、そこに足を入れて涼しみながら勉強したもんだ。エアコンがないと勉強できないなんて百年早い」
実際に学校でそれをやっている人を見て、「あぁぁ」と思ったことを覚えています。どうせ自分で勉強するなら、私はエアコンが効いているほうがいい。ということで夏の補習をサボッて図書館に行けば、教師からは怒られるわけです。
「なんでサボるんだ」と。そしてまた「昔は」と始まる。教師は自分の意見を頑として曲げないので、永遠に意見が噛み合いません。
結局、私のほうが大人の対応をするハメになるわけです。この事例で言えば、小学生が考えても勉強する環境を整えたほうが能率は上がるという結論になりませんか?当時の教師は本気でこんなことを信じていたのでしょうか。
もしもそうでないとすれば、こんな大人のこじ付けの論理で高校生を納得させられると、彼らは本気で思っていたのでしょうか。
どちらにしても、自分で試行錯誤しながらスタイルを見つけていくことを否定し、一から百まで自分の思う通りにコントロールしようとする教師の下では、品格ある子どもが育ちにくいと私は考えます。
教師だけではなく、親の言動も同様です。同じようなやりとりが、塾では日々行われていることも紹介しておきます。
母 「子どもが家でまったく勉強しないんですよ」
講師 「私が見ている限り勉強不足ということはありませんが」
母 「私が中学の頃は、いつまでもダラダラTVを見るなんてことはありませんでした。時間が来たら自分でTVを消して勉強しに行ったものです。本当にけじめがなくて。どうして手際よくできないのかしら」
こうした母親には、ほぼ100%「勉強≒我慢・忍耐」の構図ができています。「自分は我慢してコツコツやってきたのに、この子はまったく我慢しない→だから勉強していない」という具合なのです。
講師の「結果は残していますよ」という声は聞こえていなくて、自分が思い描く勉強する子どものイメージに合わないことが気に食わないわけです。そりゃ昔は勉強するために見たいTVを我慢したこともあるでしょう。
しかしそれは、ビデオがなかったからというだけの話ではないでしょうか。ビデオと携帯電話は、子どもの学習環境・生活環境を激変させた2大ツールではないでしょうか。
百歩譲って、我慢・忍耐がその当時の勉強法としては正解だったとしても、今の時代にあえてこれらのことを、勉強を通して身につけさせることは、ベストな選択肢とは言えません。かえって逆効果になるだけです。
「品格ある子どもの育て方(PHP文庫) 秋田洋和著」より
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