トップページ ≫ 外交評論家 加瀬英明 論集 ≫ 玉手箱もパンドラの箱も「希望」につながっている
外交評論家 加瀬英明 論集
日本ではバブル経済が破綻した後でも、多くの人々が放逸な欲望に駆り立てられる生活を送っていた。虚栄や慢心を擽る外国製の似非ブランド商品に憧れて消費することが、幸せをもたらすもののように錯覚していた。「楽する」ことが生きる目的となって、人生がいつも楽しいものでなければならないと、思いこんでいた。
だが、社会かどれだけ物質的に豊かになろうとも、人生が楽の連続であるというのは、真実から遠く懸け離れている。そのような人々は偽った生活を送っているから、脆くて傷つきやすい。しっかりした自分を持つことができないでいると、つねに不安である。もともと人生は逸楽 ― エンターテイメントではない。その事実から目をそらせると、すぐにストレスに憑付かれて、心が病んでしまう。
かつて日常の生活を律していた徳目を、私たちが取りもどせば、頻発する無差別殺人事件も、三万人を超すという自殺者も大幅に減ることとなろう。
あるアメリカの専門家による自殺の研究によれば、社会が物的に豊かになるほどに弛緩して、自殺が増えるという。しかし、日本やドイツでも、国土が戦場となって、明日の生命もわからず、満足な糧すらなかった時代には、かえって生きようとする意欲が漲って精神が張りつめていた。そのため、自殺する者など皆無に近かった。
たしかに、厳しい不況には、碌なことがない。浦島太郎の伝説によると、龍宮城で過ごした太郎が、もと住んでいた浜にもどって玉手箱をあけると、煙が立ちのぼって白髪の老人に変わって息絶えた。だが、そのあとで鶴の一千年の生命をえて飛び去ったという。ギリシャ神話にも、「パンドラの筐」伝説がある。玉手箱パンドラのはこをあけると、あらゆる災難が沸きでたが、希望が最後に残り、生きる力が与えられた。
十一章 農業を再興し、食糧自給率を高めよう
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