トップページ ≫ 主筆のインク ≫ ノーベル経済学賞と生きた経済
主筆のインク
今年のノーベル賞は、大村氏が北本の北里メディカルセンター、梶田氏が東松山市出身、川越高校-埼玉大学と受賞者2名とも埼玉県にゆかりがあるということで県内が湧いている。いまでは日本人のノーベル賞受賞は珍しいことではなくなったが、実はノーベル経済学賞だけは受賞者がいない。
過去受賞候補と言われた人に、森嶋通夫氏、宇沢弘文氏がおり、二人とも数理経済学の分野では大変有名な研究者で、いずれも故人となり受賞がかなわなかった。現在では宇沢氏の教え子である清滝信宏(きよたき のぶひろ)プリンストン大学教授が有力候補と言われている。ノーベル経済学賞は、どうしてもアメリカをはじめとする海外で研究活動を行い、その成果が重視される面もあるため日本人には不利なのだろうが、日本における経済学は文系学問というイメージで、数学を使った科学という認識が低いことにも理由があるのではないだろうか。日本の大学には経済系の学部や学生が多い割には、経済学という学問の社会的評価が低く感じられる。例をあげると、金融系の官庁や会社の採用に経済を専攻していたことは特に有利に働かないし、毎年年頭に経済誌などで取り上げられる経済アナリストの株価予測はほとんど当たるも八卦の域をでていない。
その結果、経済理論などは実際の世界では役に立たず「生きた経済」が大事だという世の中の空気になっている。しかしこれは本当だろうか。市場の動向を把握するにはミクロ経済の初歩である需要と供給の理解は不可欠であるし、その延長上に価格決定や在庫管理などのビジネス上での意思決定が成り立っている。またマクロ経済によって国内総生産(GDP)が導き出されてはじめて景気を把握することができる。筆者の知っている「生きた経済を知っている人たち」は経済理論をそらんじられないが、その原理を肌で理解している人たちであった。経済理論を勉強することは必ずしも実生活から離れることにはならず、自分の判断力を鍛えてくれるものだ。そんなことをノーベル賞のニュースを聞いて考えた。
小林 司
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