主筆のインク
いよいよGW(ゴールデンウィーク)。旅行に帰省にと、国内の移動が始まった。今年4月にオープンした新宿の高速バスターミナル「バスタ新宿」でも、深夜高速バスに乗るお客で混雑している様子がニュースで取り上げられていた。深夜高速バスといえば、1月に発生した軽井沢スキーバス転落事故は、13人の大学生の命が奪われた痛ましい事件として記憶に新しい。過去にも大阪や群馬で高速ツアーバスで死亡事故がおこり、そのたびに規制が強化されてきたものの、過酷な乗務員の勤務環境や安全対策を怠る事業者など、ツアーバスに代表されるサービス提供の値下げ合戦の裏側にある問題は尽きない。
安さを追求したその先に、「食品偽装問題」「産廃処理業者による不正転売」などの事件も引き起こされている。確かに、過度な規制や業界保護によって原価が高くなるという構造は電気料金などを代表に世の中に多々みられる。だからこそ規制を緩和し新規参入によって競争を促すことが、消費者に安くサービスを提供できるということで、規制緩和が進められてきた。一方、過剰な競争により安さを追求することが最優先になり、安全が置き忘れられる事件が起きている。果たして規制というものは必要なのか不要なのか。消費者にとって悩ましいところだ。
まず、我々消費者にとって必要なことは、適正価格について勉強していくことであろう。無駄なことにコストをかけた高いものを買う必要はないが、過度に安いものは当然コストも圧縮されているということを理解して、自ら判断する癖をつけなければならない。たとえば、銀行が販売する投資信託などは、銀行の収益である手数料が高いものを薦めがちである。ただ金融商品の手数料は法律によって明示することが決められているので、買う側がきちんと調べれば手数料の安いものを購入することができる。しかし、すべてが消費者にガラス張りになっているわけではない。
だからこそ、消費者保護という観点での規制が必要になる。つまり、法律や規制によって消費者に対して情報開示を促すとともに、新規参入のハードルは低くするものの、安さ追求のために不正を行う事業者まで認める必要はない。適正価格が生まれるためには健全な競争が欠かせない。消費者を守るためのルールをしっかり策定しつつ、そのルールを守らないものは不正競争者だ、こういう不正競争者を市場から排除する、このような規制をしっかり運用していくことが必要だ。
小林 司
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