社会
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埼玉県の商工業の要衝たる大宮は、駅の東側と西側でまったく様相を異にする。古い建物はことごとく消え去り、次々に新しいビルができる駅西口に対して、何十年も前から再開発が叫ばれながら計画はいっこうに進まず、昔ながらの街並みが残る駅東口。
長い間、この街になじんできた私には、昭和の面影を残し、変化から取り残されたような東口の光景に、レトロ趣味も手伝い、今では「これも悪くないな」と思えるようになった。駅前から南に抜ける狭い通りは大宮一の盛り場の南銀座、略して南銀だ。かつては映画館が並んでいたが、今は飲食店やゲームセンターの雑居ビルに変わっているものの、建物は昔のままで「よくぞ残ったものだ」との感慨を抱く。
そんな大宮駅東口だが、どうにも違和感のあるレトロ建造物がある。JRの線路と平行に南北に走る旧中山道は東口のメイン道路で歩道も広くなったが、高島屋から吉敷町交差点までの約700メートルの中の2か所で、歩道が4分の1にせばまり、やっと一人が通れる幅になってしまう。ともに今にも倒れそうな建物が昔のまま残っているのだ。4分の1幅の歩道は往時の幅なのだろう。家の傾きがひどいほうの1軒は、さすがに危険防止用の鉄柵と金網に囲まれているが、通行の不便と倒壊の危険を考えれば、長い間放置されてきたことはあきれるばかりだ。
両方とも人の気配はない。幽霊屋敷巡りの気分で建物検分を試みた。間口はともに10メートル前後だが、奥行きは長く、40~50メートルはあろう。道路側からではわからなかったが、2軒とも廃屋の奥に古びた別棟がある。廃屋は店舗だったのだろう。
驚いたことに両方とも別棟に人が住んでいたのである。1軒は住人が外にいたので、思い切って声を掛けてみた。50~60代と思える男性は、この土地建物の所有者とのこと。道路側の廃屋を撤去しないのは、金が掛かるからだという。それなら土地を売ればと聞くと、「売りたくはないんだ」と答えた。いろいろ聞き出そうとしたが、「もうこの辺でいいだろう」と口をつぐんだ。
当然ながら市当局からの接触があったことは認めていた。居住権は尊重しなければならないが、今や無価値ではた迷惑なだけの廃屋の撤去に向けて、所有者を説得すべく行政の努力を求めたい。
山田 洋
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