社会
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相模原市の障害者施設「津久井やまゆり園」で無抵抗状態の入居者19人の命が奪われてから1か月が過ぎたが、事件の残虐性と容疑者である元職員の異常な犯行動機は今も私たちの心に重くのしかかる。当欄でも事件後の8月2日付けで多田記者による「介護現場に巣食う闇」を掲載した。障害者、高齢者を取り巻く環境に触れ、介護に従事するスタッフについては、低賃金、過重労働、不正規採用等による将来への不平不満が利用者への暴力をはじめマイナスエネルギーを生んでいると指摘。さらには介護事業の一部経営者たちのぜいたくな暮らしぶりにも言及した。
津久井やまゆり園事件の直後に、東京証券取引所第1部に上場の大手介護施設会社の株価が急落した。事件のあった施設と社名が似ていたので、関連があると思われて投資家の売りを誘ったようだ。実際は無関係だったが、はからずもこのことにより少なからぬ介護事業会社が株式を上場している事実が浮かび上がった。国と医療法人、社会福祉法人に限定されていた介護事業が、2000年の介護保険導入後は株式会社など営利を目的にした民間業者も行えるようになり、異業種からの参入も相次いだ。介護の問題が、福祉だけでなく、経済、経営といった分野を含めた広がりを見せ、介護ビジネスも大きな市場となっていった。
上場している介護事業会社の株価は総じて割高と思われる水準にある。将来性を加算しての株価水準だろうが、介護現場の厳しい現実を聞くと、違和感が生じてしまう。株式上場とは会社の株式を市場に公開することで、市場で購入すれば誰でも株主になれる。ほとんどの株主が期待するのは、その会社が少しでも多くの利益を稼ぎ出し、配当金を増やし、株価が値上がりすることである。従業員の待遇、給与を改善することは経費増につながり、利益の減少になりかねない。長期的には会社の体力向上などプラス面もあるはずだが、株主は目先の利益の増減と株価の行方に目を奪われがちだ。
経営者についても同様だ。かつてコムスンという介護事業でトップクラスの会社があった。グッドウィル・グループという持ち株会社が上場していて、その中核企業だった。自衛官、大人気ディスコの経営者というキャリアを持つ若き総帥は脚光を浴びたが、2006年から2007年にかけて、介護報酬の不正請求が全国で指摘され、ついには破綻に至った。コムスンは極端な例かもしれないが、福祉の理念が欠落し、利益追求を絶対視するような企業が介護分野に進出するのは警戒したい。
山田 洋
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