文芸広場
俳句・詩・小説・エッセイ等あなたの想いや作品をお寄せください。
とにかく面白かった。読むのが遅いわたしでも、一気に読んでしまった。
芥川賞受賞作『コンビニ人間』のことである。凄い勢いで売れているのも頷ける。主人公の恵子は36才の独身女性。恋愛経験もなく、就職したこともなく、18年間同じコンビニでアルバイトを続けている。職場では仕事のできるひとで通っているけれど、マニュアルや他の店員の真似をすることで成り立っている。実際には幼少の頃より奇行で浮きまくり、社会から異物扱いを受けていた。コンビニで働いている時だけは、〝普通〟に振る舞える。〝普通〟って何?という疑問は誰しもが感じるところで、そこが読者に受けているのではないだろうか。
一方、ここで告白する。わたしは〝ノンビリ人間〟だ。幼少よりしゃべりと動作が遅すぎて、浮いたことが何度もある。小学生のわたしは、しゃべりがゆっくり過ぎて、担任から母に「しゃべりがおかしいからどこかで診てもらった方がよい」との助言があったらしい。母は思いもしないことを言われ、悔しかったらしい。中学では、部活の先輩の家に電話したら、電話に出た先輩の妹がわたしのしゃべりを真似してから取り次いでいた。(全部聞こえてるんですけど。)
大人になってからは、スピード重視の職場では適応出来なかった。高齢者施設の職員となったときには、高齢者とのおしゃべりは楽しかったのだが、スピード重視のタイムスケジュールに対応出来なかった。食事の介助も早く食べさせることが重視されるし、入浴介助も着替えさせるスピードは重要。早く早くと先輩に注意されたっけ。
〝普通〟になれないことの息苦しさはわかる。〝普通〟とは〝みんな〟と同じであること。でも〝みんな〟は、この世界のいたるところに存在し、その実態はあるような、ないような。
正直、「みんなと同じ」は息苦しい。だからまず、わたしは、他者のデコボコを寛容に楽しむところから始めよう。
檀 まま子
バックナンバー
新着ニュース
- エルメスの跡地はグッチ(2024年11月20日)
- 第31回さいたま太鼓エキスパート2024(2024年11月03日)
- 秋刀魚苦いかしょっぱいか(2024年11月08日)
- 突然の閉店に驚きの声 スイートバジル(2024年11月19日)
- すぐに遂落した玉木さんの質(2024年11月14日)
特別企画PR