トップページ ≫ 外交評論家 加瀬英明 論集 ≫ 寸刻を争う事態に対応できない日本の法体制
外交評論家 加瀬英明 論集
2月に、関東甲信と東北が記録的な豪雪に見舞われた。私は雪がやんでから4、5日後に、テレビのニュースをみて、唖然とした。安倍首相を囲んで、「豪雪対策本部」が設置されたというものだった。
他の主要国では、大型地震、ハリケーン、洪水などの事態に備えて、ふだんから、軍司令官を指揮官として、陸海空軍(アメリカなら海兵隊も)、警察、沿岸警備隊、消防、医療機関、薬品、倉庫、運送会社などを、傘下に置いた組織が常設されて、いったん中央から指示が出れば、すぐに対処できる体制をとっている。
ところが、日本では東日本大震災の時も、まず閣議が召集されて、議論が行われたうえで、ようやく対策が講じられた。
いまの日本では、個別的自衛権の行使に当たっても、まったく同じことが起こる。
仮に尖閣諸島の周辺海域で、わが海上保安庁の巡視船が、中国の公船から攻撃を受けたとしよう。現状では、海上自衛隊の護衛艦が、すぐ近くにいたとしても、手を拱いて傍観するほかない。
総理大臣が「防衛出動命令」を下令するまでは、全自衛隊が金縛りになって、武器を使用することができない。
首相が「防衛出動命令」を発するためには、まず閣議が召集される。そのあいだを省略するが、最後に衆参両院の議決を、必要とする。
このような巨大な自然災害と同じような事態が進んでいる時には、寸刻を争うというのに、いったい、どれだけの貴重な時間が失われることになるのだろうか?
これを、地方自治体に置き換えてみよう。ある町の条例に、「消防出動命令」があると仮定してみよう。
この町で、ボヤが起こった。まず、町長が役場の幹部を集めて、どのように対応するべきか、額を寄せて相談する。
そのうえで、町議会が召集される。消防車が出動すべきか、議論が重ねられ、議決が行われる。町長が出動命令を下し、ようやく消防車が消防署から出発するが、そのころにはボヤを出した家が全焼して、火が拡がって、町全体を焼く勢いで、さかんに燃えている。
当然のことであるが、世界のどの国でも、武器使用は現地指揮官の判断に、委ねられている。
これでは、個別的自衛権があっても、ないに等しい。
アメリカはいつまで超大国でいられるか 第6章日本は、なぜ誤解され続けるのか
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