トップページ ≫ 外交評論家 加瀬英明 論集 ≫ オバマのもとで、あと2年は逼塞を続けるアメリカ
外交評論家 加瀬英明 論集
オバマ大統領のギャラップ世論調査による支持率は、2014年9月現在で、38%だった。
アメリカ国民の大方が、オバマ大統領がこの2年間というもの精彩を失って、やる気をなくしてしまっていると、みている。
オバマ大統領は、9月に「イスラム国」がアメリカのジャーナリストの首を斬り落として、惨殺した映像を流した時に、いちおう蛮行を強く非難したものの、その直後に、ジョークを発したうえで、ゴルフに出かけたのに対して、批判が集まった。
この夏には、ケネディ家をはじめとして大金持ちの別荘が集まっていることで有名な、マサチューセッツ州ワインヤードで、休暇をとったことも、批判の対象となった。そして予定を切りあげて、大統領専用機で急いでワシントンに戻ったために、誰もが重要発表を行なうものと思ったが、何もなかったから、拍子抜けした。
2014年に入ってから、ヒラリー・クリントン前国務長官をはじめ、ロバート・ゲイツ、レオン・パネッタの元、前国務長官が相次いで回想録を刊行して、オバマ大統領が無能であると、批判した。なかでも、パネッタ前長官は国防長官として登用されるまで、民主党の有力な下院議員だったから、大統領の評価が深く傷つけられた。
オバマ大統領は、親しい側近がいない、孤独な人だ。そのうえ、決断することができないと、いわれる。
オバマ大統領は一期目から、外交問題については、官房長だったラーム・エマニュエルに丸投げしていたし、社交嫌いであるために、議会指導者との折衝は、バイデン副大統領にもっぱら委ねてきた。
エマニュエルは、父がイスラエルで生まれ、イスラエル独立闘争を戦った「イルグン」の闘士であり、エマニュエル自身もユダヤ系アメリカ青年として、イスラエル国防軍(IDF)に志願して、入隊していたことがある。
オバマ政権のもとで、アメリカ国民はブッシュ(子)大統領のような”タカ派”の大統領を嫌うようになったが、優柔不断で、弱い大統領も厭われている。
これから、中東や、ヨーロッパをはじめとする情勢が、もっと荒れることになろうが、心もとない。
中東の秩序が、壊れてしまっただけではない。アメリカという箍が弱まってしまったために、世界中に混乱がひろがとうとしている。
アメリカが蘇生するのは、新大統領が就任する2017年まで、待たなければならない。
もっとも、誰が新大統領になろうとも、アメリカは、ここしばらくは、内に籠り続けざるをえないだろう。
オバマ大統領が、2009年に就任した時に、ワシントンに大群衆を集めて、異常な熱狂が繰りひろげられたが、今から振り返ると、いったい何だったのだろうか。
日本の新聞や、テレビは、アメリカにはじめて黒人の大統領が登場したことを、賑々しく報じて、まるで曙光を見たように、手放しで喝采した。
アメリカはかけ替えがない友邦であるから、多少の御祝儀記事や、番組はよかろう。だが、オバマ大統領のもとで、新しい時代の幕があがったといって、囃し立てるばかりで、多くの識者が異常な人気が、じきに褪せることになろうと、不安な眼差を向けていることに触れることが、まったくなかった。
日本の新聞や、大手のテレビは、事実を報じるよりも、流行をつくりだすことを、与えられた仕事だとしてきた。
アメリカはいつまで超大国でいられるか 第6章日本は、なぜ誤解され続けるのか
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