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コラム …男の珈琲タイム
友人に花板がいた。学業もトップクラスだった。ある有名大学の受験に失敗した。彼は潔かった。大学進学を即あきらめた。「俺、板前になる!」友人の私はびっくりしたが、彼に「男」を感じた瞬間だった。「料理人になるなら絶対、一流になれよ。日本一の板前になって、その料理を食わしてくれよ」彼は「おお!」と言ってふる里をあとにした。日本では超一流のホテルに修行に入った。数年、音沙汰がなかった。
「おおぃ、やっと裏方が終わったぜ」電話の向こうで彼の声がはずんでいた。「これからまた、修行を積んで、煮方、椀方になるからな!俺!」煮方、椀方なんて、聞いたこともないし、知る由もなかったが、よくつらい修行に耐えたなと思った。後で知ったが、煮方、椀方からを板前と呼ばれるそうだ。この世界の階級制度はきつく、つらい日々の連続だそうだ。遠慮なく上役からの鉄拳が飛ぶ。もう飛び出そうかと思う日々の連続だったという。しかし、彼を支えたものは決意と志だった。ふる里を捨てた想いが望郷の念よりも、錦をもって帰ろうという大きく固い意志が彼のよろいとなっていた。
苦節15年。彼は椀方、煮方を越えて、板前のヒエラルキーNO.2の立板となった。そしてさらに数年、晴れて花板になった。花板はマネージメントからはじまって全てを仕切る。まさに板前社会の花の頂点なのだ。部下が百人近くいた。そして私は昔の私のセリフの通り、普段口にすることはできない最高の料理と美酒に酔った。
本物の男がいなくなった現在、こんな男がいることに日本の魂をふるえるほど感じている。やはり、この世は本物の男の存在なくして本物の美女もいないのだ。
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