トップページ ≫ 外交評論家 加瀬英明 論集 ≫ いなごの大群を破門したキリスト教の司教
外交評論家 加瀬英明 論集
中世のキリスト教会は、動物にも人と同じ責任能力があるとみなした。人を殺した犬や、牛や、馬や、豚を裁判にかけて、処刑した記録がある。
今日、アメリカや西ヨーロッパでは、「動物の権利(あにまる・ライツ)」を擁護する。”アニマル・ライツ・ムーブメント”がさかんだが、このような記録を読んだら、さぞ喜ぶことだろう。
十三世紀のフランスのリヨン近郊のヴィラールという町で、赤児を襲おうとした蛇を、ギヌフォールという名の雌犬が殺して、乳児を救った。
ところが子守りが見つけて、悲鳴をあげて助けを呼ぶのを聞いて駆けつけた人々は、犬が赤児を襲ったと誤解して、犬を撲殺した。
のちに、犬が赤児を救ったことが判明した。犬は冤罪を着せられて、殉教したとみなされて、聖ギヌフォールとして、聖人の叙された。
聖フランシスコは、小鳥の群れに説教しているし、バドバの聖アントニオは馬を祝福して、聖体拝領をさせている。
倉庫を荒らした鼠や、田畑の収穫を食い散らかした鳥やイナゴが捕えられて、裁判にかけられることは、珍しくなかった。
1650年には、スペイン北部のセゴビア(現在では、セゴビア県の県都)で、司教が十字架と聖遺物と聖水を持って、イナゴの群れに向かって福音を説いたのにもかかわらず、イナゴが従わなかった。イナゴは捕えられ、被告として裁判にかけられた。
神父が検事となって、捕らわれたイナゴを訊問し、死刑の判決が下された。それでも、イナゴの大群は麦畑から退去しなかった。そこで、司教がイナゴの群れ全体を、カトリック教会から破門した。
1679年にロンドンでは、女性が犬と性的に交わったかどで裁かれ、犬ともども有罪も宣告されて、犬も処刑された。
イギリスの文豪であるトーマス・ハーディ(1840年~1928年)の詩のなかに、イギリス南西部のウェセックス地方におけるクリスマス・イブの教会のミサで、イエスが生誕した瞬間に、厩(うまや)にいたロバや、牛や、羊がいっせいに跪(ひざまず)いて、幼児である救世主を礼拝したことを、称えるところを描いている。
ハーディの遺体は、ウィリアム王子が結婚式を挙げた、ウェストミンスター大寺院に埋葬されている。
ジョン・レノンはなぜ神道に惹かれたのか 二章 鯨を供養する日本人の心性
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