社会
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10月13日に東京・渋谷で開かれた「全国図書館大会」の分科会で、大手出版社・文藝春秋の松井清人社長が公共図書館関係者を前に講演し、「文庫本は会社全体の収益の30%を占める大きな柱だ。図書館で文庫本の貸し出しはやめていただきたい」と懇望した。同社では文芸誌で作家に作品発表の場を提供し、掲載作品を中心に月20点ほど単行本を刊行していて、その中から選ばれた作品が数年後に「文春文庫」に収録される。
文芸誌は恒常的に大きな赤字を出し、単行本の多くも黒字にならないという。単行本で実績を残した作品が文庫本になるので、あらかじめ利益が見込まれ、文芸系出版社の稼ぎ頭になっている。スクープ連発で気をはく「週刊文春」よりも「文春文庫」が上を行くそうだ。
公共図書館の文庫本貸し出しが急増しているのも事実だ。都内の3区で実績を公表しているが、蔵書数では文庫本は13~18%、貸し出し数では22~26%(新書を含む)を占める。また、新潟市や市川市のように文庫本貸し出しをアピールしている図書館もある。漫画本を置いてある図書館は少ないが、置いてある所では貸し出し数が突出しているというから、こちらも同様の火種になりかねない。
私はかつて出版社に勤め、今は原稿執筆等の資料用にさいたま図書館(市内の全25館)から多数の本を常時借りている。パソコンで書名を指定すると蔵書リストが提示される。その中に文庫本が出てきても、ほとんどの場合、文庫本になる前の親本も一緒に出てくる。最初から文庫本というケースを除けば、文庫本でしか読めないことはまれだ。
文庫本は判型も小さく表紙も薄いので定価も割安で買いやすい。だから「文庫本は買って読むもの」という意識が前からあったので、文藝春秋社長の意見にはうなずける部分がある。だが、出版社側も図書館に助けられている面は多い。内容は素晴らしいものの定価が高くて一般読者には手が届きにくい本は、図書館の購入によって助けられている。こういう本は「もっと買ってほしい」との出版社の声もある。
図書館としても、出版社の経営が成り立たなくなると出版そのものに赤信号がともり、図書館運営にも支障をきたす。利用者の利便を考慮しつつ、共存共栄の道を探るべきだろう。
山田洋
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