社会
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加工貿易立国として経済成長を遂げてきたと思われている日本にとって円安は好ましいものと認識されている。株価はそれに応じて動き、大手企業の業績も基本的にその一点で結果が決まっている印象だ。
十年一日の如く変わらないこの認識について本当にそうなのかどうか問うてみる事は非常に大切な事と考えている。デフレ脱却が新たな経済成長に必要不可欠であるとして未曽有の金融緩和政策が開始されてはや5年、芳しい結果が出ぬまま一向にこの政策が見直される気配はない。そもそも現状が旧来の『デフレ』とは内容が異なるという意見もある。直截かつ根拠を提示した論で高い評価のある早稲田大学ビジネス・ファイナンス研究センター顧問、野口悠紀雄氏の著作より一部その内容を引かせて頂きたい。工業製品の価格は値下がりが非常に大きく、1970年と比べると現在の水準は11分の1未満である。しかし他の全ての分野が押しなべて値下がりしている訳ではなく、一例としてサービス業については価格が大きく上昇、構造的人手不足が深刻になっている今、この傾向は一層顕著になっていくであろうと想像される。この事例からも現状がいわゆる従来型『デフレ』と質が異なるのは明らかだ。すべての物価が下がっている訳ではなく、個々の相対価格に変化が生じているのであり特に貿易可能な工業製品の価格は海外の経済条件、とりわけ新興工業国の供給条件によってのみ外生的に決まる側面が強い。従って一般に言われている国内の需要不足によりデフレが引き起こされているという説明には根拠がないことになる。つまり金融政策によるデフレ脱却はそもそも無理であるという指摘だ。日本経済の成長に必要なのは従来型の製造業から変化して、自らは開発・設計のみに特化し、製造部門はアウトソーシングして、垂直型ではない水平型によるサービス業的な質を備える製造業である事が必須となる。
日本企業の強みとされた川上から川下まで通して事業を行うスタイルからよほど特殊なものでない限り製造というプロセスが平準化してしまっている以上、企業DNA自体を大胆に変化させなければ生き残れない時代が到来している。
巷間伝わる情報を本当にそうなのかどうか自身の目で耳で立ち止まり考えてみる事は洪水のように浴びせられる現代社会の情報の渦に埋もれずに問題の切片を拾う事の出来る必須の方法であろう。良き意味で情報を鵜呑みにせぬ姿勢は社会の進化に寄与するものであると確信している。
小松 隆
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