いつも不足なものがある

お金があったら・・・

何らかの能力があったら・・・

こんな境遇でなかったら・・・

もう一度やり直しができたら・・・

幸福の青い鳥は捕まえてみると

いつの間にかカラスになっている

美しい蝶は虫籠の中で毛虫になり

キラリと水藻の中で光った魚はバケツの中で死んでいる

不足なものは子供の頃からあった

不足は一つが満たされると他の不足や不満が生まれた

そうして不満や不足は年とともに皺や白髪のように増える

殆どの人が無名で生まれ無名で終わるが

そんな世も捨てたものではない

時として舞台が暗転し夜が朝になることがある

暗い波間に灯台の光が見えることがある

小石がダイヤに輝くことがある

他人事でも長い苦労が報われ多くの人に賞賛されるのはいい

シャッピングカートの幼女と母の姿を見よ

パレードの車上で手を振る女優より輝いている

全て不足の中で一つの贈りもの、一つの言葉で幸せになる人がいる

みな虚しい多くの賞賛、勲章、表彰状以上のものだ

人の世は人を越えたものが観ている

心はそこにつながっていると思う

無名の私の友はこれまた無名である

今日その友と病を持つ娘の手紙を見て心が和んだ

山上　村人