社会
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人口が60万を突破した川口市は、県内でさいたま市に次ぐ大都市だ。かつては鋳物の産地として知られたが、工場が次々に移転し、川口駅周辺の跡地には商業ビルやマンションが林立し、昔の面影は全然ない。ここは市の南部にあたり、京浜東北線で北西に進み、西川口、蕨に行くと、また別の様相が見られる。
蕨駅西口から5~6分歩くと、蕨市を通り抜けて川口市の西端地域に入るが、ここに県内有数の規模の公団住宅、芝園団地がある。1978年に鉄道車両工場跡地に建てられ、10~15階の建物が並ぶ。この団地で中国人を中心とした外国人居住者の数が年々増加し、2400世帯、5000人の住民の半分を占めるという。保証人不要、礼金なし等入居条件がゆるく、駅から近く東京にも行きやすいのに家賃が割安なので、外国人には人気が高いのだ。
団地内や付近の店舗も中国人向けの雑貨店や食材店が目につく。中国人子弟を受け入れる団地内保育園もある。団地を管理するUR(旧・日本住宅公団)も中国人スタッフを配置したりして、増える中国人居住者に対応してきた。それでもゴミ出しルールや騒音などで、日本人居住者からの苦情は多かった。団地自治会に加入する中国人もほとんどいなかった。
そんな中、2013年頃から地域商店街活性化イベントで日中交流がはかられ、共生の実現に向けての一歩が踏み出された。2015年には大学生たちが「芝園かけはしプロジェクト」を立ち上げ、この年に開催された「ハロウィンフェスタ」は自治会、商店会など地域の関係者が一体となって実行され、住民同士の友好、共生をめざすものとして本欄でも紹介された(2015年10月29日付)。
先日、筆者は芝園団地を訪ね、広い敷地内を歩いてみた。ゴミ置き場には引っ越した人が置いていったのかマットレスが立てかけてあったものの、ゴミの散乱はなかった。駐輪場には自転車が整然と並んでいた。関係者たちの地道な努力の成果を見た思いだった。
蕨から1駅の西川口の西口一帯は以前、一大風俗店街として異様な隆盛を見せていた。しかし、2004年頃から違法風俗店の取り締まりが始まり、軒並み閉店に追い込まれ、ゴーストタウン化していった。ここも今、中国人街になりつつあるという。中国からそのまま引っ越してきたような中国料理店が急増しているのだ。
つぶれた風俗店の建物で商売を始めるのを日本人はいやがるが、中国人は気にしない。駅の近くなのに家賃が安いのが魅力なのだ。今やその数20店以上。
原色の看板、店名もなじみのない漢字が使われ、メニューも知らないものばかり。店外にもれてくる臭いも結構強烈だ。客も従業員も中国人という店も多い。辛いけどうまいと聞いていたから、一度食べたら病みつきになるかもしれないけど、今回は見送ることにした。
横浜中華街は日本人の好みに合わせた料理で人気を得たが、ここは中国人の嗜好そのもののようだ。近年、池袋駅北口にできた中華街も日本人の好みとは違うと言われるが、西川口はそれ以上ではないか。池袋は200店もあるそうだから、1ケタ違いの増殖を見せた秘訣を学んで、ゴーストタウンを活性化してほしいものだ。
山田 洋
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