トップページ ≫ 外交評論家 加瀬英明 論集 ≫ 食人習慣を取り入れなかった日本
外交評論家 加瀬英明 論集
あの時代の世界では、食人習慣はヨーロッパから、中国にいたるまで、罪悪感を伴うことなく、ひろく行われてきた。
中国では日本と違って、古代から食人が行われてきた。
中国の記録によれば、儒教の始祖となった孔子は、毎日、醬に漬けた人肉を楽しんでいた。醬は、今日の味噌、醬油の原形となった発行調味料である。
孔子がもっとも愛していた弟子であった子路は、論争で負けてしまって、相手に食べられている。
中国で鄧小平時代になってから、一時、出版の自由が緩められた。
以前、紅衛兵が人民文化大革命のときに、多くの派に分かれて、全国にわたって、互いに殺してその肉を食べあったという本が、出版されたことがある。日本でも訳書がされたが(鄭義者『食人宴席』黄文雄訳、光文社カッパブックス、1993年刊)、あまりにも酷たらしい話だったので、売れなかった。
中国では歴史を通じて、食文化として、食人が行われてきた。
2003年5月に、アフリカのコンゴに住むピグミー族が、体が大きいレムデュ族によって狩られて、食べられてしまうために、国連に人権蹂躙のかどで提訴したことがあった。いまでも、食人嗜好を保っているのは、中国人だけではない。
人が信じるもののなかで、宗教ほど気高いものはない。
それにもかかわらず、これまで宗教がしばしば諍いと、禍の種を播いてきた。
もし、ユダヤ民族がイスラム教に改宗していたとしたら、パレスチナ紛争が起こるはずがなかった。
レバノンでは、イスラム教徒とキリスト教徒が、抗争している。もし、レバノン国民全員が、イスラム教徒か、キリスト教徒だったとしたら、これまで十数万人が犠牲になったレバノン紛争が避けられた。
もし、北アイルランドの人々が、全員、カトリック(旧教)か、プロテスタント(新教)だったとしたら1990年代まで数万人の人命を奪った北アイルランド紛争が、もたらされることがなかった。
いま、すべての宗教がハイブリッドであることを、認識することが求められていると思う。
ユダヤ教も、キリスト教も、イスラム教も、奴隷を容認してきた。中国においても、同じことだった。ところが、日本には古代から奴隷が存在しなかった、中国から進んだ文物を取り入れたのに、宦官や、纏足や、奴隷制度を模倣することがなかった。
纏足は幼女のころから足を縛って、小さく、奇形にする習慣である。中国では近代に入るまで、行われていた。
宗教も文化も、すべてがハイブリッドだが、日本は取捨選択して、好ましくないものは取り入れないという判断が、はたらいたのだ。
ジョン・レノンはなぜ神道に惹かれたか 第6章 世界宗教と神道はどこが違う
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