社会
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大相撲の第60代横綱、双羽黒こと北尾光司が55歳で亡くなった。童顔ながら身長ほぼ2メートル、体重150キロ超の恵まれた体格でスピード出世をとげ、1986年に優勝経験なくして22歳で横綱になった。不滅の69連勝など戦前・戦中の相撲界の看板たる双葉山、その後をになった羽黒山(初代)という所属する立浪部屋の大横綱の名前を合わせた四股名からも周囲の期待の大きさがわかる。
しかし、翌年の暮れ、ちゃんこ料理のことから親方と衝突、部屋を脱走し、そのまま廃業してしまった。横綱在位はわずか8場所だった。その後プロレス界入りし、いくつかの団体を転籍した。1992年にはUWFインターナショナルに加わり、同年10月に「格闘技世界一決定戦」と銘打って高田延彦との対戦が組まれた。
体格では北尾が圧倒していたが、高田のハイキックをまともに顔面に受けてKOされてしまった。キックを武器とする相手に対する防御面の甘さが露呈したわけで、テレビ観戦していた私は歯痒い思いをした。素質に恵まれながら、相撲やプロレスではあまりいい所がなかったものの、私は彼が見せた圧巻のシーンが忘れられない。
相撲界から去って数年後、シェイクスピア劇「リア王」の舞台。滝田栄がリア王役で、北尾は衛兵のような役柄だった。数人の敵が彼を襲うが、一瞬のうちに全員を吹っ飛ばしてしまう。演技とはいえ、本物のパワーを見せつけてくれたのだ。観客のどよめきと歓声が沸き上がり、大悲劇とは思えぬ雰囲気に包まれた。
大劇場での公演ではなかったので、見た人は多くなかったようで、今回の訃報記事でもこの芝居に触れたものはなかった。しかし、この時、彼が活劇役者になれば特性が生かせるはずだと思った。結局はこの道を選ばなかったのが残念でならない。(敬称略)
山田 洋
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