社会
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森友・加計問題や「桜を見る会」疑惑等、安倍晋三首相は何度か危機に直面しながらも、いつも何とかはぐらかしてきた。ところが、東京高検の黒川弘務検事長を次期検事総長にするための定年延長では、彼が安倍政権寄りであることからインターネット上で市民や著名人の抗議が拡大し、政府・与党は今国会での検察庁法改正を見送らざるをえなくなった。とどめは週刊文春による黒川検事長の賭けマージャン報道で、検事長は辞任を表明するに至った。だが、法の番人たる人物が常習的に賭博行為をしていたのに、大甘の処分ですまし、巨額の退職金が支払われる。
目をおおいたくなるような一連の事態だが、注目したいのは、検察庁法改正法案に抗議する旨のツイートが急速に広がったことだ。今まで政治について発言を控えていた芸能人、文化人の投稿がそれを加速させた。この背景には検察官に対するイメージの変化があるようだ。
青山学院大学の前学長、三木義一氏はテレビドラマの影響を挙げる。「1962年に始まった『判決』は弱い人のために弁護士が社会正義を実現していくドラマだった。当時の若者にとっては、弁護士はヒーローであり、検察官は権力の走狗にしか見えなかった」と回顧した上で、「それから40年後、大学法学部学生の進路希望に検察官が増えた。2001年から始まったテレビ『HERO』の影響も大きかったようだ」と指摘する。木村拓哉が演じる型破り検事が、警察の刑事さながらの現場捜査を展開する姿が人気を呼び、視聴率も30%を超えた。
刑事訴追する権限を持つ検察官は国家権力の執行者であり、数々の冤罪をもたらしたのも事実だ。反面、時の首相や大臣も刑事事件の捜査や訴追の対象になる。検察官は政府の命令に従うのではなく、独立して正義を追及する義務がある。だから、検察官の人事に政権が介入するのはタブーとされた。
かつてはヒーロー視された弁護士のほうの人気は下降している。弁護士が増え過ぎてしまったのだ。法科大学院を中核とする法曹養成制度が2004年にスタートし、司法試験合格者数を大幅に増やした。1990年までは500人未満だったのが2007年に1500人を突破、以後2000人を超える年が数年続き、合格率も5割近くになる年があった。ちなみに昨年は1502人で合格率は33.63%。検察官や裁判官の採用人数は伸びていないから、多数の司法試験合格者は弁護士にならざるをえない。
法曹需要を過大に見込んだ政府のミスだ。米国映画では弁護士をすぐ呼ぶシーンが多いが、日本は事情が違う。弁護士以外にも、弁理士、税理士、司法書士、行政書士のような法律家が多数いる。民事訴訟の件数も減っている。
仕事が少なくなったこともあり、弁護士の不正が相次ぐ。そこまでしなくても、客を選べず、悪い奴から依頼され、その手先になって動く弁護士は多い。苦労して司法試験に合格しても、これでは報われない。
山田洋
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