トップページ ≫ 社会 ≫ 人権法制定は今必要か、判断を迫られる日本
社会
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昨年、香港で施行された国家安産維持法、また新疆ウイグル自治区での人権問題のクローズアップをきっかけに、マグニツキー法の制定を目指す政治的な動きが我が国でも出てきている。
マグニツキー法とは、ロシア当局の汚職を告発したセルゲイ・マグニツキー氏が後に拘束され、獄中死した事件をきっかけとしてアメリカで2012年に制定された人権法である。外国の人権侵害に関わったと認定された特定の個人・団体を対象に入国禁止や資産凍結を行う事が可能でその後、同様の法が英国やカナダ、また昨年2020年末にEUでも制定されている。
日本国憲法において、人権は極めて重要な欠くべからざる国民の権利として記されている。一方で我が国には人権侵害を理由として他国に制裁を課せる法律は準備されていない。
今回の一連の動きは、この憲法の重要な理念を普遍的価値として、これを機会に対外的に発信していこうとする問題提起の側面もあるだろう。日本版マグニツキー法の議員立法での成立を目指し、この4月に超党派の議連が自民党の中谷巌、国民民主党の山尾志桜里氏などを中心に設立されたが、中国を対象とした制裁を可能とする事がこの法整備の目的と明確に示しており、それもあってか公明党議員は個人として参加1名のみ、また自民二階幹事長などこうした動き自体を牽制している勢力もあり、今後実現可能な動きとなっていくかどうかは不透明な状況だ。
識者の間でも、先進国で同法の制定がないのは日本だけであり、主体的な政治的判断の行う為の選択肢として、少なくとも準備は必要とする考えと、過去にこうした人権法が有効に機能した事例はなく、効果は疑問とする考えが拮抗してり、全会一致とはいかないようだ。
私見だが、国として対外的に自国の価値観を発信する事、また少なくともその体制を整えていこうとする努力を躊躇するべきでないと考える。うがちすぎかも知れないが、こうした法を準備しない事で、政治的選択から逃れようとするサボタージュ的な姿勢は、激変しつつある現下の世界的状況からしても一層受け入れがたい態度として受け取られるのは想像に難くなく、得策とはいえまい。
但しその実現の際には、相手によって対応を変えたり、また発信が散発的なのは論外だ。この手の問題がいずれの国で起きた場合でも、常に、かつ継続して訴えてこそ、初めてこの法が有効に機能するといって過言ではない。
グローバルに展開している企業はそのサプライチェーンの最適化を求めるが故に、図らずも製造工程に問題を含む原料の調達に行きついてしまう場合はあり得るだろう。その場合、事実関係の如何を問わず、不買運動にまで繋がるケースも十分に想定され、個々企業には極めて難しい立ち回りが求められることになる。
激変する世界政治の潮流の中で何を為し、何を為さざるべきなのか、目的をしっかりと定めた真剣かつ闊達な議論が望まれる。
小松隆
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