社会
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立花隆氏逝去、この訃報を耳にしたとき、一つの時代の終焉を強く感じた。一介のファンとして多くの作品に触れさせて頂いたが、その仕事ぶり確かに心底驚嘆に値するものだった。その著作スタイルは社会物、科学物を問わず一貫して、ご自身の興味を基礎にして、徹底した詳細な下調べに裏打ちされていた。
一例を記すと、天皇と東大(月刊誌文芸春秋連載時タイトル/私の東大論)では、右派、左派を問わず膨大な登場人物を、過去の著作、直接間接の取材からその相関関係を可視化し、その人物が昭和史に与えた影響をそれぞれにあぶりだす。全体像をクリアカットにはなかなか理解しきれない戦前昭和思想史の変遷を、あたかもチャート図にまとめ上げるような仕事ぶりは、この著作活動後期の大作でも徹底されていた。
熱心なファンにとってはその著作を通して、氏が何故この分野に知的興味を惹かれたのか、変な言いまわしになるが、頭の中を覘いてみたいという欲求で読み進めていた方も多かったのではなかっただろうか。
柳田邦男氏による追悼文に氏の文体は乾いた文体だったとのコメントがあったが同感である。そしてそのとっつき難さの後ろに、人間に対する確かな愛情が垣間見られる箇所をその文章の中に見出す事はまた楽しみでもあった。
感情を表に出すことをあまり好まなかった氏が確か武満徹さんの追悼番組だったと思うが、感極まって落涙されたシーンは、その人となりの一旦を示す出来事として印象深く記憶されている。
哲学とはもともと知を愛するという意味だそうだ。立花さんは生涯を通じてその哲学的姿勢を貫かれ、そして旅立たれた。訃報に触れ、改めてファンだった事、またその影響を自覚した気がしている。感謝と共に、心よりご冥福をお祈りしたい。
小松隆
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