社会
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秋の気配が深まった晴天の日に長野市の善光寺を訪ねた。7年前の9月にも同好の友人たちと信州の古寺巡りをしたが、最後の訪問先がこの寺だったこともあり、印象も一番強かった。
江戸時代に再建された壮大な本堂(国宝)や、真っ暗闇の回廊を手探りで進んで極楽の錠前を探り当てる「お戒壇めぐり」などとともに、お寺に向かう道の両側に広がる門前町にひかれた。蔵造りや石造り、れんが造りの店が並ぶ。郵便局や金融機関も昔の建物に入っている。仲見世と呼ばれるこの通りは古くは露店や見世物小屋が集まっていたが、明治になってから常設店舗の町に変わった。
「牛に引かれて善光寺参り」と言われたように昔から参拝者を集めていた。御本尊の一光三尊阿弥陀如来像は6世紀の仏教伝来の折に百済から日本に渡った国内最古の仏像とされている。いろいろな経緯を経て642年に現在の地に祀られ、後に絶対秘仏とされ、その姿を見ることはできなくなった。日本仏教の根本ともされる御本尊への信仰は宗派を越えて広まった。男女平等の救済を説く寺院としても知られ、女性参拝者が多いのも昔からの特徴だ。
参拝者の増加は門前町のにぎわいをもたらした。このような往時をしのばせる風景は、ある時期から私の心をとらえるようになった。埼玉県には川越市の蔵造りの町がある。軒を連ねる豪壮な蔵には圧倒されてしまい、私の懐古趣味とは一味違う。
さいたま市中央区の本町通りもかつては蔵造りの店が並んでいた。時の経過とともにその数は激減してしまった。桜並木の名所でもあったが、戦争中の燃料不足を補うために全て切り倒された。そんな中、この通りにも往時の建物を再建したような家も新築されている。レトロな感覚を取り入れた低層マンションも見られる。消失寸前の過去の景色を残そうとする誇り高き人々の意気を感じる。
山田洋
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