社会
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先日の参議院議員選挙では自民党が大勝し、野党では日本維新の会の躍進が目立った。特に比例代表では8議席を獲得し、立憲民主党を1議席上回った。ただ、その8人の顔触れを見ると、元スポーツ選手や芸能人などで、いずれも個人名での得票は少なく、政党名での得票に助けられて当選が転がり込んできたと言える。
その中に最年長75歳の元東京都知事・猪瀬直樹氏が入っているのには「もういいよ」と思ってしまう。2012年に石原慎太郎知事が国政復帰のために任期途中で辞任した後の知事選で、医療法人徳洲会から5000万円を受け取ったことから翌年の都議会で追及され、 5000万円の札束に見立てた箱を汗だくになってカバンに詰め込む姿が映し出された。結局、在任1年で辞任し、公職選挙法違反で略式起訴され、罰金50万円、5年間公民権停止となったのだ。
この人が無名の雑誌ライターだった頃、講談社『月刊現代』に署名入りで書いていた原稿を私はたびたび読んでいた。取材力は感じたが、文章がネチネチしていて読後感が良くなかった。そんな彼が『週刊文春』にコラムを連載開始した時は驚いたが、文章には嫌味なところが残っていた。
当時については猪瀬氏が慕っていたというノンフィクション作家・本田靖春氏(2004年歿)が遺作となった『我、拗ね者として生涯を閉ず』(講談社文庫)の中で「文藝春秋の『週刊文春』に喰らいついて、有名人への階段を上がって行った」と記している。そして猪瀬氏が西麻布に事務所ビルを所有し、郊外に持ち家を構えていることなどに触れて、「本田が猪瀬の師匠だ、と一部でいわれたことがあるが、その事実はない。だいたい生き方がまるで違う彼が、私に学ぶことなんてありはしないではないか」と突き放している。
評論家の佐高信氏も猪瀬氏と対談などで遣り合ってきた人だ。書名もズバリの『自分を売る男、猪瀬直樹』(2012年 七つ森書館)では「小泉純一郎に取り入り、石原慎太郎にも……」として権力者に自分を売り込んでいく彼の処世術をなじっている。1987年に大宅壮一ノンフィクション賞を受賞した猪瀬氏の『ミカドの肖像』についても、選考委員の立花隆氏が「この作品の中心は空虚である」と批判したにもかかわらず、小ずるく立ち回った彼が受賞したとしている。この時の選考委員に前出の本田氏も入っていたが、選考結果についての複雑な思いがあったはずだ。
猪瀬氏のかつての仕事仲間の佐野眞一氏の『巨怪伝 正力松太郎と影武者たち』が1995年の同賞候補作になった。猪瀬氏は何人かの選考委員にこれを選ばないように働きかけたことまで佐高氏はぶちまけている。
猪瀬氏、佐野氏たちが所属したジャーナリスト集団で先輩格だった小板橋二郎氏は講談社『週刊現代』元編集長との対談で「昔から尊大なところがあって、まあそれが売りになってる部分もあるんだけど」とした上で「近くにいる人間からあんなに嫌われる奴もいない」とあきれていた。(『知られざる出版「裏面史」元木昌彦インタヴューズ』2016年 出版人・刊)
これほど不人気なのに選挙に出た人の厚顔無恥にも驚くが、この人を公認候補とした政党の人材不足も相当なものだ。
山田洋
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