トップページ ≫ 社会 ≫ 思想の呪縛から解き放たれた右派活動家
社会
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新右翼団体「一水会」の創設者で、評論活動を続けていた鈴木邦男氏が1月に亡くなった(享年79歳)。2015年に彼の講演会が浦和で開催された時のことを当欄でも書いたが、長年の右派活動において、立場を異にする人たちと対談や討論を重ね、独自の立ち位置を模索してきた人だ。朴訥とした語り口もあって親しみを抱かせるのか、対談相手も胸襟を開いていく。
彼は早稲田大学に入学後、右派の新宗教「生長の家」の学生団体のリーダーになった。さらに民族派学生の全国組織を結成し、委員長になるが、内部紛争でその座を追われる。1970年11月に東京・市ヶ谷の自衛隊駐屯地で作家の三島由紀夫らが割腹自殺したことで触発され、運動に復帰する。
逝去の報を受け、鈴木氏の著作に再び目を通すと、三島とともに大きな影響があったのが、かつて左派学生に心酔者が多かった作家の高橋和巳だと知って驚いた。「右派学生運動に命をかけてきたのに、もう闘う場がない、生きる場がない」と思ったが、高橋に助けられたのだという。「運動をやってきた人間が挫折し、生きていく。でも、自殺したりしない。次の闘いの道を見つけて生きていく。その<道>を教えられた」(2017年 河出書房新社『高橋和巳』)と回想している。
2歳年下で、早大では日本共産党のゲバルト隊長として彼と激突を繰り返したノンフィクション作家・宮崎学氏との共著『突破者の本音』(2001年 徳間文庫)でも、政治的立場の違う二人が天皇制の是非、歴史の嘘と真実、日本政治の現状などについて意見をぶつけ合い、両者の違いを浮き出させていて興味深い。二人ともこの対談を機に大転換、大変身したと鈴木氏は「文庫本あとがき」に記している。間を置かずに二人が亡くなり、再度の対談が望めなくなったのは残念でならない。
山田洋
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