トップページ ≫ 社会 ≫ 消費税増税にあたっては簡易課税方式の廃止を
社会
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来年4月からの消費税増税について来月早々に安倍首相が判断するということである。新聞報道によれば8%増税の意向を固めたようだ。増税反対派は増税による景気の腰折れやデフレ脱却できないという点を危惧し、賛成派はここで決断できないと財政再建の道筋がつかない、国際公約を守れないことによる国債暴落などを懸念している。
ひとつ言えるのは、「増税無き財政再建」や「増税の前にやるべき事がある」というアプローチでは日本の財政再建は永遠に成り立たない。世界経済からみると、GDPの2倍以上の借金991兆円を背負っている日本の信用が保たれているのは、欧米各国に比べて消費税の増税余地が残っているからである。財政規律を維持していくためにも、ここは消費税増税を決断してほしい。同時に歳出削減やインフレ誘導と、複合的に財政再建に取り組むべきであろう。
消費税は本来インフレを起こすものだが、それがデフレ懸念につながる理由は本来転嫁されるべき消費税増税分が買手業者の圧力で転嫁されず、下請けや納入業者を叩いて低価格競争をするからである。消費税とは最終消費者が負担をするものではあるが取引各段階で納税されるため、消費税が各段階で適正な上乗せをされなければならない。そこで、今年の6月に消費税転嫁法(消費税転嫁対策特別措置法)が成立し、これにより消費税の引き上げの時に買手業者が増税分の価格転嫁を拒否する事を禁止し、納入業者が増税分を価格に上乗せしやすくなった。
しかしもっと大きな問題は、中小企業の「簡易課税方式」である。消費税の納税額は「預かった消費税」から「支払った消費税」を引いた額であるが、 この方式では「支払った消費税」を実際に計算せずに、業種ごとに設定された「みなし仕入れ率」を掛けて納税額を算出する。売上の少ない事業者への「免税点制度」とともにこの「簡易課税方式」が、国庫に納められるはずの税金が事業者の懐にはいる益税の温床となり、消費税がネコババと言われる所以である。さらに、今後税率が10%を超えるときに議論される食料品や生活必需品などへの軽減税率についても、仕入れ商品の構成によって支払い税額が異なるため、「みなし仕入れ率」方式では商品ごと税率の違いは反映されないのだ。
これを根本的に解決するためには、納税額を正確に把握できる原則課税方式つまりインボイス(納品書)方式に課税方式を統一することである。これは、インボイスに商品の価格や仕入先に支払われた税額などが明記され、これによって「支払った消費税」の金額が確認され、脱税や二重課税の防止につながる。
そもそも「簡易課税方式」は平成元年に消費税制度が日本に導入された際、少しでも納税者からの反発を和らげようとするために苦肉の策として設置した妥協策の一つで、消費税導入20年を過ぎたこのタイミングでそろそろ見直すべきではないか。
インボイス方式は中小企業にとって事務負担が重いという声もあるが、ヨーロッパではとっくに導入されており、また会計ソフトも格段に進歩している今事務負担を理由に正確な税の計算をしないということでは最低限の企業の社会的責任が果たされていないと考えるが、いかがであろう。
(林 智守)
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