社会
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此処のところ中国関連のニュースは天安門突入と山西省連続爆発の物騒な事件ばかりである。おかげで?尖閣列島の問題は一時棚上げの感である。中国政府はこの事件が広く波及するのを恐れ、早々と二つの事件に関連性が無い事をアピールしたが、はたしてどうなのか、まったく疑わしいのである。両事件共に政府への不満を募らせた市民の暴発だった事は確かなようである。この騒乱のニュースが世界中に広がれば中国が抱える深刻な問題が浮き彫りになり国際社会から関心と同情を寄せられるのを恐れて必死になって沈静化をはかっているのである。しかしながら、事件の概要はインターネットを通じ世界中にばら撒かれてしまっている。これらから得られる情報だけでもかなりの事が判って来るのである。
日本のメディアは中国騒乱の陰に格差がある事を伝えている。天安門に突入したのは新疆ウィグルの分離独立を目指す反政府ゲリラだと断定してウィグル族の締め付けを強化し、監視の手をさらに厳しくしたようである。ウィグル族と言うだけで犯罪者扱いにしてしまうほどの極端な弾圧を始めているようだ。新疆ウィグル自治区の省(区)都である烏魯木斉(ウルムチ)は高層ビルが立ち並ぶメガポリスで百万人を超える大都市である。政府が巨費を投じて人工都市を作り上げたのだが、率直に言って、こんな砂漠のオアシスに果たしてどんな産業が興せるのだろうかと思っていたが、はたして、高層マンション群は北京、上海、広州に住む金持ちたちのマネーゲームの道具となっただけで、地元民の入居者は無く、裕福な漢人だけのようである。ウィグル族の人たちの働く場がまったく確保されていないのである。肝心の経済振興策はほとんどかえりみられていないし、一向に進む気配もないのだ。人工で大都市は建設したものの、仏作って魂入れずで、都市規模に応じた仕事がまったく無い蜃気楼のような都市なのである。住民の働く場はいたって少ない上に、ウイグル族は格下に見られているから就職活動でも五人の採用枠があれば、ウイグル族は一人だけという状態なのである。貨幣経済が浸透する中で職場が得られないウィグル族の人々の生活は苦しい。この現実に直面して漢族との格差に怒りを覚えるのである。漢人達の周辺民族に対する蔑視は異常に強い。これは長い歴史の中で育んだ漢人のDNAなのである。表面化こそしていないものの中国での民族差別、人種差別には想像を絶するものがある。上海は世界に冠たる中国が誇る国際都市である。しかしながら街で黒人の姿を見かる事は少ないと言うよりほとんど無い。中国人のあからさまな人種偏見に会えば、誰だって、こんな所で仕事なんかする気にならないのだ。世界中のどんな大都市に比べても黒人系の駐在者が少ないのが最も近代的だと自負する上海なのである。ましてや地方においては言わずもがなであろう。ひと括りに中国と言ってはいるものの漢民族だけの国では無い。多くの民族によって構成されている国なのである。気の遠くなるような歴史の中で漢民族が周辺の少数民族を吸収しながら形成された複雑な様相の多民族が同居している国家なのである。天安門突入の事件は、この辺を考慮に入れてもっと深く掘り下げて見るべきだと思う。
一方の山西省連続爆発は容疑者をすぐに拘束したようで、社会への報復が動機である個人の犯罪だったと発表した。社会心理を刺激する事件の頻発を防ぐために早急にジエンドさせたのだ。香港では容疑者は窃盗で懲役刑に服したが、司法の不公正を訴えて陳情を繰り返していたタクシー運転手であると伝えている。中国でも市民の陳情を受ける為の門戸は開かれている。どんな村にも窓口はあるのだが、難しい問題はさらに上へ行けと言われるのだ。その先の機関でも手を焼くような問題は、さらに次の上級機関へとなっていき、このたらいまわしが、市から省へ、そして国へと延々と続くのだ。この間、途方も無い時間と経費が懸かり、北京にたどり着くころには疲れ果てて経済的にも精神的にも追い詰められてしまうのである。それでも陳情を受けてもらえれば希望も湧くのだろうが、何ヶ月も待たされた挙句に門前払いになったり、公安当局の意図的な強制退去にあったりするケースさえ多々あるようなのだ。こんな目にあえば誰だって自暴自棄になったり、生きる望みを失ってしまうのも当然であろう。共産党の一党独裁党が恒常化してしまった社会なるが故に、こんなにも非人道的な官僚組織が各地各所で営営と生きながらえ立ちはだかっていられるのだ。弊害は計り知れないほど甚大であるのだが庶民は抗すべき手段を一切持たされていない。この二つの事件は、そんな立場に追い込まれた普通の市民が止むに止まれず起こしたものだ痛感している。家は大きくなればなるほど掃除が行き届かなくなってしまう。単一国家としては隅々まで公平で公正な社会システムを行き渡らせるには中国は大きすぎるのである。このスケールこそが中国の弱点であり、今回はこのデメリットの部分が事件となって現れたのである。これらを今後どのような形でクリアしてゆくのか興味深いのであるが、現在のところ中国首脳の発言からはこれらへのビジョンがまったく語られていないが、これをもって中国は既に衰退に向かっている兆しと見るのは早計なのだろうか。
(仁 清)
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