トップページ ≫ 社会 ≫ 社説 ≫ 新たな都市インフラとしての公衆無線LAN
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3年前の東日本大震災では多くの首都圏でも公共交通機関が止まり、徒歩で自宅に帰る者、会社に泊まる者など多くの帰宅困難者が出た。いまだ記憶に残っているのは、安否確認のために携帯電話で連絡をとろうにも不通状態が続き、一方ミクシィ、ツイッター、フェースブックなどのソーシャルメディアといわれるものは稼働をして、安否確認や情報のやりとりのプラットフォームとして存在感を高めたことだ。また通話についてもスカイプといったインターネット通話サービスは稼働していた。何故このような違いがおこったのであろうか。
携帯電話が不通になったのは、輻輳(ふくそう)という利用者のアクセスが集中することによって回線がパンクする現象のためで、災害時にかぎらず、年末年始や花火大会などの大規模イベントでも見られる。一方、ソーシャルメディアなどはインターネット通信でデータをやり取りする。これはパケット通信といわれる通信方式で、データを小さなまとまりに分割して送信する。この方式のメリットは通信回線の混雑を回避して(道路に例えると)迂回路を通ったり、バイクが渋滞の隙間を抜けるようにデータを届けるのだ。ただ災害時にこのインターネット通信で安否確認や連絡や情報提供するためには、無線LANを使ってインターネットへ接続できる場所の確保が必要だ。
この公衆無線LANは災害時だけではなく、観光振興にも不可欠である。外国人観光客が旅行中に困ったことのダントツ1位は、なんと無料公衆無線LAN環境が少ないことである(観光庁調査)。外国人観光客にとって、観光情報の取得、フェースブックやツイッターでの情報発信、地図やメール利用などでインターネット回線を利用したい時がある。しかし、国内に無料の公衆無線LANが少ないため、彼らは有料で通信会社と契約するのである。残念ながらわが国のネット環境整備は先進国の中でも遅れていて、公衆無線LANのアクセスポイント(インターネット接続場所)数は韓国の10分の1という少なさである。
外国人観光客の利便性を高め、そのことにより海外からの集客や市内の回遊、そして様々な購買促進のために無料公衆無線LANを整備する自治体が出てきた。福岡市の「Fukuoka City Wi-Fi」、静岡県・山梨県・神奈川県による「Fujisan Free Wi-Fi」などがそれだ。「Fukuoka City Wi-Fi」は福岡の空港、港、JR・地下鉄の駅など276ヶ所でアクセスポイントを提供している。外国人観光客用に日韓中台英の5ヵ国語対応し、ポータル(入り口)画面では福岡の観光情報や市からの情報を提供している。「Fujisan Free Wi-Fi」は今年の6月末までに3県で4,000箇所設置することを目標にしており、道の駅などにアクセスポイントを設置する計画だ。この公衆無線LANのプロジェクトが都市のインフラとして認知され、いたるところでネット接続できるまで利便性を高めるために必要なことは官民連携だ。
公衆無線LANは一つのアクセスポイントで半径30mをカバーできる。これを整備するのに5万円弱かかる。これをすべて自治体でまかなえないので、民間と連携する必要がある。福岡市では高島市長自ら市内のホテルに出向き、アクセスポイント設置を訴えている。また愛知県や静岡県では無料公衆無線LANが提供される自動販売機がある。もちろん官民連携で整備されているアクセスポイントは災害時には市民に開放され、災害・危機管理情報が提供される。このことからも公衆無線LANは新たな都市インフラとして整備を考えていく必要がある。埼玉県内自治体では朝霞市などが公衆無線LANサービスを提供しているようだ。観光立県の実現のため、災害時対応のためにも埼玉県内での官民連携による公衆無線LANの整備が望まれる。
(小林 司)
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