社会
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3月末に奈良県明日香村の岡寺で、国指定重要文化財の仁王門に油のような液体がまかれるという事件が起きた。4月に入ってからも同様な犯行が奈良を中心に全国各地で続発しているが、犯人は捕まっていない。
被害にあった明日香村の橘寺や飛鳥寺、橿原神宮には昨秋に訪ねたばかりの私には事件が身近に感じられる。特定の宗派を狙ったわけではないから、宗教的理由はなさそうだ。有名な文化遺産を損傷することで自己満足を得ようとした者がいて、つられてその真似をする者が出てきたということか。
ここ十数年、すぐれた研究者の引率のもと、10人ほどのグループで全国各地の古い寺社を巡って、建築物や仏像を見てきた。奈良や京都に限らず、伊豆、会津、尾道、信州などを回ったが、いつも感じていたことがある。有名な観光寺院はともかく、どこでも所有する文化財の維持や保護に苦労しているようなのだ。
重要文化財の仏像を多数有する長野県の古刹では、私たち一行は住職から1時間にわたって金銭面を含めた愚痴を聞かされた。ここは見栄えからして貧乏寺ではないはずなのだが。なかには貴重な文化財の保管にはあまりにも無防備な建物の寺も少なくない。雨露をしのぐのがやっとの状態で、悪い奴に狙われたら、お手上げなのではと思ってしまう。
世界文化遺産に登録されるための活動はさかんだが、それはごく一部のものしか対象ではない。全国の多くの文化財が危機に瀕していることを見過ごしてはならないだろう。
(山田 洋)
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